金子晴勇[著]キリスト教思想史の諸時代 別巻1 アウグスティヌスの霊性思想[第8回配本]

金子晴勇[著]キリスト教思想史の諸時代
別巻1
アウグスティヌスの霊性思想[第8回配本]

新書判・256 頁・本体1,200 円+税
ISBN978-4-909871-48-0 C0216

書 評

「不安な心」に呻吟し、あの「ミラノの回心」を経て、最も著名な教父の一人となっ たアウグスティヌスをキリスト教霊性の先駆者として捉え、その全体像に肉迫!

このように被造物に創造の初めから与えられている根源的な対向性は「あなたのうちに (in te) 憩うまで安らぎを得ない」とあるように、その目標とするところは神の内にある平安である。この平安に至るまでの状態は「わたしたちの心は不安に駆られる」と説明される。(本書より)

主な目次

序論 霊性思想史におけるアウグスティヌスの意義

第1章「心の対向性」としての霊性思想

①霊性は「神への対向性」である/②「不安な心」の意義/

③プラトン主義の神秘体験/④ミラノの回心物語

第2章 『告白録』の霊性

①「心の不安」としても霊性/②キケロによる知的な回心/③プラトン主義の神秘的体験/④ミラノにおける回心

第3章 神への超越と霊性機能

①霊性の超越機能/②聖なる愛と霊性活動/③「神の像」と「神の似姿」

第4章 神の観照から霊性の育成

①司牧活動から来る精神的変化/②享受と使用における霊性機能

第5章 聖霊の受容機能としての霊性

①『霊と文字』における生かす霊/②アウグスティヌス祈りとペラギウスの批判/③「アウグスティヌスの祈り」の解釈/④第2の祈りと協働を志向する意志

第6章 霊性の創造作用としての愛

①「愛によって働く信仰」の意義/②愛の命法と倫理/③結婚の三つの善と神律倫理/④ペラギウス論駁書における霊性機能

第7章 霊的人間と霊化する恩恵

①人間の自己理解の深化/②恩恵の先行性と信仰/③人間の類的理解による内的人間と霊的人間/④ローマ書第7章の解釈/⑤恩恵論の完成した図式/⑥恩恵による自由の発展

第8章 『神の国』における霊性

①人間学の完成された図式/②霊的な人間の完成した姿/③霊的な身体の理解

第9章 説教集における霊性

①『説教集』159 における霊的感覚/②『詩編講解』の霊性思想/③『ヨハネ福音書講解説教』の霊性思想

第10章 『書簡集』における霊性

① 謙虚と霊性(書簡118の研究)/② 霊性と神の直視(書簡147の研究)/③ 神の現臨(書簡187の研究)

あとがき

書評再録(評者:阿部善彦氏)

全巻構成(赤文字は既刊 各巻 新書判・平均272 頁・1,320 円税込)

Ⅴ ルターの思索[好評既刊]

Ⅵ 宗教改革と近代思想[好評既刊]

Ⅶ 現代思想との対決[好評既刊]

別巻1 アウグスティヌスの霊性思想[第8回配本]

別巻2 アウグスティヌス『三位一体論』の研究 [第9配本 2023 年12月予定]

著者紹介 

金子晴勇(かねこ・はるお)

1932年静岡生まれ。1962年京都大学大学院博士課程中退。67年立教大学助教授、75年『ルターの人間学』で京大文学博士、76年同書で日本学士院賞受賞。82年岡山大学教授、1990年静岡大学教授、1995年聖学院大学客員教授。2010年退官。 

主な著書:『ルターの人間学』(1975)『アウグスティヌスの人間学』(1982)、『ヨーロッパ人間学の歴史』(2008)、『エラスムスの人間学』(2011)、『アウグスティヌスの知恵』(2012)、『知恵の探求とは何か』(2013)、『キリスト教人間学』(2020)、『私たちの信仰』(2020)、『人文学の学び方』(2020)、『ヨーロッパ思想史』(2021)、『東西の霊性思想』(20212)、ほか多数 

主な訳書:アウグスティヌス著作集 第9 巻(1979)、ルター『生と死の講話』(2007)、ルター『神学討論集』(2010)、エラスムス『格言選集』(2015)、C. N. コックレン『キリスト教と古典文化』(2018)、エラスムス『対話集』(2019)ほか多数 太文字は小社刊行