金子晴勇[著]キリスト教思想史の諸時代 Ⅱアウグスティヌスの思想世界[第2回配本]

KanekoHaruo_Shisoushi_cover金子晴勇[著]
キリスト教思想史の諸時代 Ⅱアウグスティヌスの思想世界

新書判・264 頁・1,200 円(税別)
ISBN978-4-909871-33-6 C0216

書 評

 

 

 


 その中心思想を「 不安な心」 として捉え、「 心の哲学」から「霊性」へと展開された軌跡をたどる

本書は、わたしが青年時代から今日に至るまで追究してきたアウグスティヌスの「心の哲学」という主題をその霊性思想を含めて完成させたものです。大学に助手として勤め始めた頃、『共助』というキリスト教雑誌に「不安な魂の足跡を訪ねて ― アウグスティヌスの生涯と思索から ―」という論文を書きました。その中でアウグスティヌスの中心思想を「不安な心」として捉え、「心」の動態を三つの前置詞でもって示しました。このような些細な発見が、実は、生涯を通しての研究を導き、どのような成果をもたらしたかを本書は示しています。

わたしは先の初期論文で短く触れたことをその後も詳細に研究し続け、それから20 年後に纏めた『アウグスティヌスの人間学』で「心の哲学」として発表しました。この研究はさらに「心」の深部にある「霊性」として継続され、五年ほど前に「アウグスティヌスの霊性思想」として一応完成しました。「心」についての最初の記述は10 行ほどの短いものでしたが、それがその後の研究でどのように補われ、解釈が加えられ、根本思想として解明されていったかを本書は示しています。(あとがきより) 

主な目次

1 古代末期の世界
「談話室」 古代末期かキリスト教古代か

2 不安な心の足跡を訪ねて
「談話室」 「とれ、よめ」の意味

3 心の対向性――『告白録』の「心の哲学」
「談話室」 グレトゥイゼンのアウグスティヌス解釈

4 精神的発展と思想世界の形成
「談話室」 プラトン主義の受容と批判

5 思索の方法――信仰と理性の問題と神学的思索
「談話室」 「サマリアの女」についての説教に見られる「霊と真理」

6 心の機能としての霊性
「談話室」 『説教集』159 における「霊的感覚」

7 ペラギウス批判と霊性の復権
「談話室」 アウグスティヌスの怒りと死の危険

8 アウグスティヌスの影響
「談話室」 最晩年のアウグスティヌス

著者紹介 

金子晴勇(かねこ・はるお)

1932年静岡生まれ。1962年京都大学大学院博士課程中退。67年立教大学助教授、75年『ルターの人間学』で京大文学博士、76年同書で日本学士院賞受賞。82 年岡山大学教授、1990年静岡大学教授、1995年聖学院大学客員教授。2010年退官。

主な著書:『ルターの人間学』(1975)『アウグスティヌスの人間学』(1982)、『ヨーロッパ人間学の歴史』(2008)、『エラスムスの人間学』(2011)、『アウグスティヌスの知恵』(2012)、『知恵の探求とは何か』(2013)、『キリスト教人間学』(2020)、『わたしたちの信仰』(2020)、『人文学の学び方』(2020)、ほか多数

主な訳書:アウグスティヌス著作集 第9 巻(1979)、ルター『生と死の講話』(2007)、ルター『神学討論集』(2010)、エラスムス『格言選集(2015)、C. N. コックレン『キリスト教と古典文化』(2018)、エラスムス『対話集』(2019)ほか多数

20200920好評発売中!
キリスト教思想史の諸時代I


キリスト教思想史の諸時代 全7巻[3巻目以降の目次紹介]*変更される場合があります。

キリスト教思想史の諸時代Ⅲ ヨーロッパ中世の思想家たち 

目次

はじめにアウグスティヌスからルターへ

1:中世ヨーロッパ社会の形成

談話室  中世史家ピレンヌと増田四郎

2:コトゥス・エリウゲナの『自然の区分』

談話室  中世文学にあらわれた騎士道的な愛

3:アンセルムスと「理解を求める信仰」

談話室  神の存在証明は必要か

4:ベルナールの神秘主義

談話室  観想と活動の生活

5:女性神秘主義の特質

談話室  ベギン運動について

6:聖フランチェスコとボナヴェントゥラ

談話室  修道院文化について

7:トマス・アクィナスの神学大系

談話室  ボナヴェントウラとトマス・アクィナス

8:ダンテとヨーロッパ的な愛

談話室  パオロとフランチェスカの物語

9:エックハルトとドイツ神秘主義

談話室  魂の根底と霊性

10:新しい敬虔(デボティオ・モデルナ)の運動――ヘールト・フローテからガブリエル・ビールまで

談話室  ジェルソンの『薔薇物語』批判

11:オッカム主義の伝統とその破綻

談話室  パラダイムの転換

 

 

キリスト教思想史の諸時代 Ⅳ エラスムスと教養世界

目次

Ⅰ:ルネサンスと教養

談話室  ペトラルカとアウグスティヌス

Ⅱ:教養の概念――『現世の蔑視』と『反野蛮人論』の研究

談話室  古典をどのように読むべきか

Ⅲ:『格言集』の意義

談話室 平和の格言「戦争は体験しない者に快い」

Ⅳ:『エンキリディオン』の研究

談話室  エラスムスとヨーロッパの文化総合

Ⅴ:新約聖書の序文

談話室  「パラクレーシス」(読者への呼びかけ)の意義

Ⅵ:『真の神学方法論』

談話室  スコラ神学批判の方法とは何か

Ⅶ:『痴愚神礼賛』は語る

談話室  格言「アルキビアデスのシレノス」

Ⅷ:『対話集』とはどんな作品か

談話室  「聖なるソクラテス、わたしたちのために祈ってください」

Ⅸ:エラスムスの女性観

談話室  「がみがみ女房」を読む

Ⅹ:「もの」と「しるし」――エラスムスの聖書解釈学

談話室  『対話集』の「事物と名称」との比較

XI :近代主体性の問題――ルターとの対決を再考する

談話室  自由意志論争の意義

 

キリスト教思想史の諸時代 Ⅴ ルターの思索

目次

序論――ルターにとって「思索」とは何か

Ⅰ:思想の出発点となった試練――始原的な体験

談話室  宗教改革の遠因と近因

Ⅱ:伝統の受容と変革

談話室  ルターの信仰

Ⅲ:神と人との認識

談話室  人間学は自己理解から発生する

Ⅳ:キリスト神秘主義

談話室  神秘神学の流れ

Ⅴ:スコラ神学批判

談話室  スコラ神学者ラトムスとの対決

Ⅵ:律法と福音

談話室 ルターによるパウロ主義の発展

Ⅶ:神学の方法

談話室  試練と省察

Ⅷ:説教の意義

談話室 言語の意義

Ⅸ:文化の改造

談話室  ルターの教育改革――義務教育と大学改革

Ⅹ:職業と社会

談話室 ヴェーバーの世俗化論

XI:宗教改革の意義

談話室 ルターの遺産

 

キリスト教思想史の諸時代 Ⅵ 宗教改革と近代思想

目次 

序論ヨーロッパ思想史の断絶と連続

1:談話室近代ヨーロッパの思想の源流

談話室 変革期を読み解く――伝統社会から近代社会へ

2:談話室宗教改革者たちの世界

談話室 オーバーマンの『二つの宗教改革』から学ぶ

3:談話室宗教改革の意義

談話室

4:宗教改革と近代思想――自律と神律

談話室 プロテスタンティズムの哲学者カント

5近代的自我の問題――デカルトとパスカル

談話室 パスカルの「心」概念

6:啓蒙主義の人間観

談話室 理性による自律は可能か

7:敬虔主義の人間観

談話室 ゲーテの「美しい魂の告白」

8:ライプニッツの人間観と神義論

談話室 予定調和説は可能か

9:カントの批判哲学の意義

談話室 ハーマンのカント解釈

10:ヘーゲル哲学とキリスト教

談話室 ヘーゲルは文化総合を実現したか

11:シュライエルマッハーと「心情の宗教」

談話室

 

キリスト教思想史の諸時代 Ⅶ 現代思想との対決

目次

はじめにデーモンとの闘争

Ⅰ:世俗化とは何か

談話室 バウマーの歴史解釈

Ⅱ:解体の時代

談話室 ヘーゲル学派の分裂

Ⅲ:ワイマール文化

談話室 理性の崩壊と再建

Ⅳ:大衆化現象の問題

  1. 現代ヨーロッパ文学の諸特質
  2. 無形の大衆の出現
  3. 疑似宗教としての科学信仰(ヴァイツゼッカーの批判的対決)

談話室 大衆と独裁者

Ⅴ:水平化と実存思想――キルケゴールの戦い

談話室 『現代の批判』を読む

Ⅵ:対話の哲学――ブーバーとマルセル

談話室 カフカの世界

Ⅶ:現代人間学の成立

談話室 ものの虜となる現象

Ⅷ:ヒトラーのファッシズムとの対決――ボンヘッファーとシモーヌ・ヴェイユ

談話室 闘争する霊性

Ⅸ:ヨーロッパのニヒリズム

談話室 ドストエフスキーの『悪霊』を読む

Ⅹ:社会哲学の歴史と現況

談話室 プロテスタンティズムの職業倫理と聖俗革命