山口 雅弘[著]ガリラヤに生きたイエス いのちの尊厳と人権の回復
山口 雅弘[著]ガリラヤに生きたイエス いのちの尊厳と人権の回復
新書判・336頁・1,500 円+ 税
ISBN978-4-909871-63-3 C0216
書 評
“ ガリラヤ” を抜きにしては イエスもキリスト教もない
イエスが生まれ育ち、民と共に暮らし、「神の国運動」の場となった「ガリラヤ」、その地に焦点を当てて聖書を捉え直す渾身の「キリスト教解体新書」。〈歴史のイエス〉と〈信仰のキリスト〉との間にある剥離を明示してキリスト教最大の問題を乗り越え、イエスの生き方の核心を示す「いのちの尊厳と人権の回復」に肉薄する。
イエスの眼差しは、社会的・政治的・宗教的な権力支配の構造悪によって棄民化(きみんか)され、難民化される人々に向けられました。そしてガリラヤの人々の願いや抵抗の生き方は、神を信頼し自立的に生きる の「弱者の武器」を用いる「非暴力」によるものでした。人々はイエスの福音を受け継ぎ、何事も「あきらめず」に希望を持って生きるように促されたのではないでしょうか。(本文より)
目次
序 章 イエスの生き方の核心は
イエスの生と死/心身の「癒し」 と「 全人間的な解放」/志ん生の本 とパウロの呻うめき、そしてイエス、他
第一章 「イエス」探求の前提
イエスの 「神話化」 を問う/「イエス・キリスト」という呼称/いのちの尊厳と人権を奪う宗教のシステム化/キリスト教の 「変遷」 を問う課題、他
第二章 「ガリラヤ」という歴史的な場
イエスと「 ガリラヤ」/ ガリラヤの特異性 / 北イスラエルの伝統 /「異邦人のガリラヤ」と言われる理由 / ガリラヤの社会と支配構造
第三章 ガリラヤ農民イエス
農民・木工職人イエス / 日常の風景 / 中庭を中心にした共同体 /「女」 と「 男」 の間には/農民の苦しみと弱者の武器、他
第四章 旅に出るイエス ― 怒りと希望
放浪の旅立ち?/ イエスの怒り/ ヒューマニズムの徹底化 / イエスが示す 「神の国」/ 共食と共生の実現を求めて / パンの分かち合い / 一切れのパンのために罪を犯さず
第五章 晒し柱 ― 犠牲のシステム
晒し柱の処刑について/ 十字架の「贖罪」/ 強者の論理と犠牲のシステム / 晒し柱による死についての再考
第六章 宗教のジレンマとその克服
イエスの「誕生と死」、 そして「 復活物語 」/「 復活信仰」 と女性たち / 宗教のジレンマとその克服、他
終 章 弱さを絆に
主な参考文献 表 あとがき
著者略歴
山口 雅弘(やまぐち・まさひろ)
1948 年札幌に生まれる。日本聖書神学校卒業。以後、日本キリスト教団 教会の牧師を歴任。アメリカ・ケンブリッジEpiscopal Divinity School に留学(神学修士号取得)。単位互換制度によりハーバード大学神学校で学び、米国長派研修施設(ニューヨーク)常駐神学教師、並びに諸教会の協力牧師。日本聖書神学校講師(新約学) 。現在、日本キリスト教団引退牧師。
著書 『イエス誕生の夜明け ガリラヤの歴史と人々』、『よくわかる新約聖書の世界と歴史』 (以上日本キリスト教団出版局) 、『イエスの道につながって:教会暦による 随想とメッセージ』 (新教出版社) 。
編・著書 『聖餐の豊かさを求めて』(新教出版社) 。翻訳書 M. ヘンゲル著『イエスは革命家であったか』 共訳、(新教出版社) 、L. ウイリアムソン著『現代聖書注 ―マルコによる復員書』、P. パーキンス著『現代聖書注 ―ペトロの手紙1・2、ヤコブの手紙、ユダの手紙』 (以上日本キリスト教団出版局) 、M. ディベリウス著、H. コンツェルマン改訂増補 『牧会書簡注 ―第1・第2 テモテ書、テトス書』 (教文館)。