ベルント・U・シッパー[著]日髙貴士耶[訳]トーラーの解釈学 箴言2章、申命記、箴言1-9 章の構成について
2026年12月10日刊行

ベルント・U・シッパー[著]日髙貴士耶[訳]トーラーの解釈学 箴言2章、申命記、箴言1-9 章の構成について
A5 判・528頁・本体2800円+税
ISBN 978-4-911054-98-7 C0016
箴言と申命記を往還しながら
聖書の中を流れる〈知恵〉の河!
神から人へ、〈上から下へ〉と下賜された啓示神学である申命記。人生経験に根ざした地上の一般的知恵から出発して神の前に至る、〈下から上へ〉という神学に基づいて書かれた箴言。この両者の間に横たわる密接な関係性と緊張・対立構造を鮮やかに描き出しながら、聖書の持っている重層性を解明したシッパーの名著、待望の邦訳!
フォン・ラートから半世紀。知恵文学研究は、新たな段階へ!
「知恵・人間・神」という問いは、箴言という書の核心へと読者を導くものである。従来の研究は、箴言を知恵の基礎的諸原理だけを提示する書と見なす傾向があったが、近年の研究は、この書が知恵の基礎のみならず、その限界についても描いていることを明らかにしてきた。すなわち、実践的知識と神学的知恵に関する批判的言説と、申命記―神のトーラーという思想を含む―の受容が密接に結びついており、いわば「同じ硬貨の表と裏」のような関係にあるのである。(本書より)
主な目次
日本語版への序文
第1章 導 入
1.1 箴言2 章のこれまでの解釈について
1.2 これまでの研究における箴言と申命記
1.3 エジプトの知恵文学と「テクストの一貫性」の現象
1.3.1. エジプトの知恵文学における引用と引喩
1.3.2. 書記とテクスト性
1.3.3. エジプトとイスラエルの知恵文学におけるテクストの一貫性
1.4 本書のアプローチ
第2章 テクスト分析:箴言2章の教訓
2.1 翻 訳
2.2 テクスト分析
2.2.1. テクストの様式と構造について
2.2.2. 前半部(2:1‒11)
2.2.3. 後半部(2:12‒22)
2.3 箴言2章の構成について
2.3.1. 箴言1–9 章の文脈における箴言2章の様式的構造
2.4 結 論:箴言2章の意図について
第3章 箴言2 章の伝統史について
3.1 申命記・申命記主義的伝統
3.1.1. 戒め( מצות )、箴言2:1
3.1.2. 心を傾けること( נטה לב )、箴言2:2
3.1.3. YHWH、法、そして知恵、箴言2:6
3.1.4. 道のメタファーと土地、箴言2:12–22
3.1.5. まとめ
3.2 知恵の詩編
3.2.1. 詩編37 編:救済と破滅
3.2.2. 詩編119 編:知恵とトーラー
3.2.3. 詩編19 編と知恵のトーラー
3.2.4. まとめ
3.3 後期の預言テクスト
3.3.1. エレミヤ書31–32 章と「新しい契約」
補論:心の概念
3.3.2. マラキ書2 章と「見知らぬ女」
3.3.3. 終末論のテクスト
3.3.4. まとめ
3.4 結論:他の諸伝統との文脈における箴言2章
第4章 箴言の書という文脈における箴言2章
4.1 箴言1–31 章の文脈における箴言2章
4.1.1. 箴言2:1–4 における参照
4.1.2. 箴言2:5–8 における参照
4.1.3. 箴言2:9–11 における参照
4.1.4. 箴言2:12–15 における参照
4.1.5. 箴言2:16–19 における参照
4.1.6. 箴言2:20–22 における参照
4.1.7. まとめ
4.2 箴言の書という文脈における箴言1–9章の構成について
4.2.1. 編集史に対する従来のアプローチ
4.2.2. 10の教訓とエジプトの生活教訓
4.2.3. 10の教訓の構造と文脈について
4.2.4. 教訓の目次としての箴言2 章
4.2.5. 箴言1:20–33、3:13–20、8:1–36 における擬人化された知恵についての詩、そして9 の教訓
4.2.6. 6:1–19における幕間と箴言10–31章
4.2.7. 箴言の書における1:1–7 と9:1–18 の枠組み
4.3 結論:箴言2章と箴言1–9章の構成
第5章 トーラーの解釈学: 申命記と箴言
5.1 捕囚期後の時代における「トーラー」
5.1.1. תורה という用語
5.1.2. トーラーの解釈
5.2. 箴言の書における申命記の受容
5.2.1. 箴言3章、6章、7章
5.2.2. 箴言8章における擬人化された知恵
5.2.3. 箴言13章と法的知恵の概念
5.2.4. 正義とトーラーについて:箴言28章
5.2.5. 箴言30章と知恵の限界
5.2.6. まとめ
5.3. 箴言の書の構成とトーラーの知恵化
5.3.1. 箴言2章から箴言の書の最終形態へ
5.3.2. 申命記の受容とトーラーの知恵化
5.3.3. 年代設定、および知恵とトーラーの言説の担い手の問題
5.4. シラ書とバルク書における知恵とトーラー:概観
第6章 結 論
6.1 テクストの一貫性の現象と箴言2 章
6.2 箴言2 章と他の諸伝統の参照
6.3 箴言2 章と箴言1–9章の構成
6.4 トーラーの解釈学:箴言2章、申命記、箴言の書
6.5 トーラーの解釈学から箴言の神学へ
6.5.1 経験的知識から批判的知恵へ
6.5.2 人間から神へ―箴言の書における知恵とトーラー
6.5.3 「知者のもとに行き、知恵ある者となれ!」(箴言13:20)―― 箴言の神学
参考文献
略号一覧
人名(研究者)索引
聖書・古代文献索引
訳者解説
訳者あとがき
著者略歴 ベルント・U・シッパー(Bernd U. Schipper)

1968年生まれ。マインツ大学およびボン大学で福音主義神学・ユダヤ学、ボン大学でエジプト学・考古学を学ぶ。1999年、ボン大学神学博士(Dr.theol.)。2004年、ハンブルク大学哲学博士(Dr. phil.、エジプト学)。ブレーメン大学教授、ハーヴァード大学客員研究員、オルデンブルク大学教授を経て、2010年よりベルリン・フンボルト大学神学部教授(旧約聖書学・古代オリエント世界におけるイスラエル史)。2022–2025年、国際旧約聖書学会(International Organization for the Study of the OldTestament: IOSOT)会長。欧州研究会議(European Research Council: ERC)のAdvanced Grant を獲得し、2022–2027年、研究プロジェクトDEMBIB: Demotic Egyptian Papyriand the Formation of the Hebrew Bible を主宰。
主著 Sprüche (Proverbia) 1–15, BKAltes Testament XVII/1, Göttingen: Vandenhoeck & Ruprecht, 2018(英語版 Proverbs 1–15: A Commentary on the Book of Proverbs 1:1–15:33,trans. Stephen Germany, ed. Thomas Krüger, Hermeneia, Minneapolis: Fortress Press,2019); Geschichte Israels in der Antike, Beck Wissen 2887, München: C.H. Beck, 2018(第3版、2025年。日本語訳『古代イスラエル史 「ミニマリズム論争」の後で』山我哲雄訳、教文館、2024 年); Reinhard G. Kratz and Bernd U. Schipper (eds.), Elephantine in Context:Studies on the History, Religion and Literature of the Judeans in Persian Period Egypt, FAT I 155, Tübingen: Mohr Siebeck, 2022など。論文多数。
〈訳者略歴〉 日髙貴士耶(ひだか きしや)

1994年生まれ。2020-2024 年、スイス政府奨学生として、チューリッヒ大学神学・宗教学部博士課程在籍。2023 年、ヨーロッパ聖書学会から、EABS Student Prize を受賞。2024 年、神学博士(Doktor der Theologie)。2024-2026 年、スイス国立科学研究財団(Swiss ational Science Foundation)の研究員として、オルデンブルク大学で研究に従事。現在、スイス国立科学研究財団の研究員として、チューリッヒ大学に在籍。
主著 The Theme of Diaspora in the Pentateuch. FAT I 193, Tübingen: Mohr Siebeck, 2026.翻訳 K・シュミート『旧約聖書神学』小友聡監訳、教文館、2023 年など。論文多数。

