金子晴勇[著]「良心」 の天路歴程 隠れたアンテナ効果とは?(ヨーロッパ思想史)

金子晴勇[著]「良心」 の天路歴程 隠れたアンテナ効果とは?(ヨーロッパ思想史)

四六判上製・296 頁・本体1,800 円+税
ISBN978-4-909871-97-8 C0016

天上への道は良心のそれである。M. ルター

〈良心〉は、単に道徳意識の源泉であるにとどまらず、人間の生存と存在の根源 ― 霊性 ― に深く根を下しているのではないか? 古今東西の宗教、哲学、文学における著者ならではの縦横無尽なフィールドワークの集積によって新たな「良心論」が誕生! 創造された人間すべてに備えられている“ アンテナ機能” とはなにか?!

主な目次

序説 ― 霊性の扉は良心現象の解明によって開かれる

序論 良心はどんな現象を意味するのか
⑴ ヨーロッパ精神史における良心概念の形成/⑵ ルターにおける良心概念/⑶ 現代人の「良心」意識の問題

第1章 日本人の恥の意識と良心
⑴ 恥の文化と罪の文化/⑵ 恥と良心との関係/⑶ 漱石の『こころ』/⑷ 恥の三形態、公恥・自恥・羞恥/⑸ 良心と実存の三段階/⑹ キルケゴールの三段階説

第2章 良心の現象 その1 ― 社会的良心
⑴ 一般化された他者/⑵ 社会的規範の内面化/⑶ 日
本的な人倫組織と良心/⑷ 良心の強制と自由/⑸ 警告
する良心

第3章 良心の現象 その2 ― 倫理的良心
⑴ 自然法と良心/⑵ 実践理性と良心/⑶ 理想と現実/⑷ 告発し審判する良心/⑸ 倫理的「やましくない良心」

第4章 良心の現象 その3 ― 宗教的良心
⑴ 倫理的良心から宗教的良心へ/⑵ やましい良心の発生過程/⑶ やましい良心と死/⑷ 情緒的良心の現象/⑸ やましくない良心の諸相/⑹ 信仰による良心の新生/⑺ 超道徳的良心の問題

第5章 良心概念の多義性と統一性
⑴ 語義的考察/⑵ 道徳的意識の源泉としての良心/⑶宗教的世界観の反映

第6章 良心と悔恨の学説史
⑴ 良心概念の学説史的考察/⑵ 「悔恨」(Reue)概念の解釈上の対立

第7章 ルターとドストエフスキーの良心概念 ― 比較考察の試み
⑴ ルターとドストエフスキーの共通点/⑵ 魂の深淵としての超道徳的良心/⑶ 良心の三つの形態/⑷ 良心における神と悪魔との対決
付論 バニヤン『溢れる恩恵』の物語
『「良心」 の天路歴程』 ― あとがき

著者紹介 金子晴勇(かねこ・はるお)

1932年静岡生まれ。1962年京都大学大学院博士課程中退。67年立教大学助教授、75年『ルターの人間学』で京大文学博士、76 年同書で日本学士院賞受賞。82 年岡山大学教授、1990年静岡大学教授、1995年聖学院大学客員教授。2010 年退官。

主な著書:『ルターの人間学』(1975)『アウグスティヌスの人間学』(1982)、『ヨーロッパ人間学の歴史』(2008)、『エラスムスの人間学』(2011)、『アウグスティヌスの知恵』(2012)、『知恵の探求とは何か』(2013)、『キリスト教人間学』(2020)、『わたしたちの信仰』(2020)、『人文学の学び方』(2020)、『ヨーロッパ思想史』(2021)、『東西の霊性思想』(2021)、『キリスト教思想史の諸時代Ⅰ〜Ⅶ、別巻2』(2020〜2023)ほか多数 

主な訳書:アウグスティヌス著作集 第9 巻(1979)、ルター『生と死の講話』(2007)、ルター『神学討論集』(2010)、エラスムス『格言選集』(2015)、C. N. コックレン『キリスト教と古典文化』(2018)、エラスムス『対話集』(2019)ほか多数