エーティンガー[著]喜多村得也[訳]ドイツ敬虔主義著作集 ⑧聖なる哲学 キリスト教思想の精選集[第一回配本]

エーティンガー[著]喜多村得也[訳]ドイツ敬虔主義著作集 ⑧ 聖なる哲学 キリスト教思想の精選集[第一回配本]

四六判上製・288 頁・本体2,000 円+ 税
ISBN978-4-911054-07-9 C0016

書 評

ドイツ敬虔主義著作集(全10巻)の刊行に際して 金子晴勇

17 世紀の後半のドイツに起こった敬虔主義は信仰覚醒運動であって、その発端は、ルター派教会が次第に形骸化し内的な生命力を喪失し、信仰が衰えたとき、原始キリスト教の愛と単純と力をもって道徳的な「完全」をめざすることによって起こった。この運動はルターの信仰を絶えず導きとして正統な教会の教えにとどまりながら、その教えの中心を「再生」に置いて、新しい創造・新しい被造物・新しい人間・内的な隠れた心情・神の子としての道徳的な完成などをめざして展開した。

この運動はシュペーナーの「敬虔主義の集会」から具体的に発足し、彼の著作『敬虔なる願望』(1675)によって教会改革案の基本方針が定められ、実践的なフランケによって継承され、ハレの孤児学院の創設となり、さらにツィンツェンドルフ伯爵によるモラヴィア兄弟団(別名ヘルンフート)の信仰覚醒運動としてヨーロッパ各地やアメリカ合衆国にまで広がった。

これとは別に南ドイツのヴュルテンブルクの聖書学者ベンゲルやエーティンガーによって思想的に深められ、ドイツ思想界に大きな影響を与えた。また詩と思索にすぐれたテルステーゲンの思想をも紹介してみたい。

日本では啓蒙主義の思想家ばかりが偏重され、それらと対決する敬虔主義の思想が全く無視されてきた。そこで敬虔主義の思想家の中から主な作品を翻訳し、最終巻にはその思想特質の研究によって、現代的意義を解明すべく試みたい。

主な目次

ドイツ敬虔主義著作集(全10 巻)の刊行に際して  金子晴勇

はじめに

Ⅰ 聖なる哲学について

Ⅱ エーティンガーの神学的思想世界より

Ⅲ 小品集

Ⅳ 新都市アン・デァ・グローセン・リンデンでの公開説教  ― エーティンガーの十字架論〔訳者〕 ―

Ⅴ アントニア王女の教示画

Ⅵ 指導者はソロモンの箴言をその家臣と共にどのように修練するか

Ⅶ 「主の祈り」にならう朝と晩の祈り

解説「聖なる哲学」  金子晴勇

あとがき

訳者紹介

喜多村得也(きたむら・とくや)

1944 年生まれ。1968 年早稲田大学卒業、1972 年早稲田大学大学院ドイツ文学修士。1971年昭和大学講師、1978 年同大学助教授、1992 年同大学教授(2009 年まで)、同大学名誉教授。海外研修;1973 年チューリッヒEuro-zentrenにてドイツ語研修、1979 年西ドイツHumboldt Institut にてドイツ語研修、1992 年ドイツ、Berlin Humboldt 大学国際ドイツ語教員ゼミナール研修、1996 年ドイツ、Kassel 大学言語文化研究所にて研修、他研修多数。2023 年逝去。 共訳:カッシーラー遺稿集第一巻『象徴形式の形而上学のために』、法政大学出版局、2009 年。論文:「若きゲーテの宗教性について」(早大修士論文)1972 年、「聖書とゲーテ」序論、1973 年、「若いゲーテの宗教的探究と『牧師の手紙』について」1977 年、「ゲーテの宇宙発生論的神話」1985 年、「ゲーテ『旅人の夜の歌』考」1988 年、「宮崎駿監督作品『千と千尋の神隠し』における心のヨーロッパ」(最終講義)2008 年、以上昭和大学紀要、「芥川龍之介『藪の中』覚え書」、1977年、同人誌雪崩、他多数。1997 年より小平福音集会を自宅にて開催(聖書を読む会、古典を読む会)。

ドイツ敬虔主義著作集 全10巻

第1巻 シュペーナー『敬虔なる願望』佐藤貴史、金子晴勇訳

第2巻 シュペーナー『新しい人間』山下和也訳[第四回配本予定]

第3巻 シュペーナー『再生』金子晴勇訳

第4巻 フランケ『回心の開始と継続』菱刈晃夫訳

第5巻 ベンゲル『グノーモン』と『歩んだ道と言葉』金子晴勇訳

第6巻 ツィンツェンドルフ『福音的真理』金子晴勇訳[第二回配本予定]

第7巻 エーティンガー『自伝』喜多村得也訳[第三回配本予定]

第8巻 エーティンガー『聖なる哲学』喜多村得也訳[第一回配本]

第9巻 テルステーゲン『真理の道』金子晴勇訳

第10巻 ドイツ敬虔主義の研究[第五回配本予定]