金子晴勇[著]東西の霊性思想 キリスト教と日本仏教との対話
金子晴勇[著]東西の霊性思想
キリスト教と日本仏教との対話
四六判上製・288頁・1,980 円 税
ISBN978-4-909871-53-4 C0016
書 評
西行や良寛を読むと心が澄み渡り、法然や親鸞に信心は鼓舞される。
ルターと親鸞はなぜ、かくも似ているのか。キリスト者が禅に共感するのはなぜか。
「初めに神が……」で幕を ける聖書。唯一信仰に生きるキリスト教と、そもそも神を定立しないところから人間を語り始める仏教との間に対話は存在するのか。多くのキリスト者を悩ませてきたこの問題に「霊性」という観点から相互理解と交流の可能性を探った渾身の書。
東西の霊性思想 —キリスト教と日本仏教の比較考察 — 目次
はじめに — キリスト教と仏教との霊性の比較は可能か
第1章 東西の宗教における霊性の展開
- はじめに
- 日本人の霊性について
- ヨーロッパの人間学における霊性の特質
- 霊性の機能
- 心身の統合機能である霊性の今日的な意義
- 偶像化作用=「ものの虜となる」
- 「出世主義」と「高貴な人」
第2章 東西の霊性における二類型
- ヨーロッパ文化における霊性の歩み
- 日本文化における霊性の歩み
- ヨーロッパ文学における霊性の表現
- 日本文化とくに詩歌における霊性の感性的表現
- 霊性の二類型
第3章 キリスト教における霊性の特質
- はじめに
- 聖書における「霊」の意味
- ヨーロッパにおける宗教の二類型
- キリスト教的霊性の二類型
- アウグスティヌスの霊性
- ディオニシオスの神秘主義
- ルターによるディオニシオス批判
第4章 日本仏教における霊性思想の創造
- 空海の霊性思想
- 鎌倉仏教の特質
- 法然の霊性思想
- 親鸞の霊性思想
- 道元の霊性思想
- 白隠の霊性思想
第5章 キリシタンと近代日本のキリスト教霊性思想
- キリシタンと日本仏教との出会い
- コリヤード『懺悔録』における霊性の自覚
- 植村正久の霊性
- 内村鑑三の霊性思想
- 新井奥邃の霊性思想と綱島梁川の霊性体験
第6章 日本の仏教思想家の霊性思想
- 清沢満之の宗教心
- 鈴木大拙の日本的霊性
- 西田幾多郎の霊性思想
- 西谷啓治の霊性思想
第7章 東西霊性思想の比較考察
- 一般啓示と特殊啓示
- エックハルトと禅思想
- 東西の恩恵宗教(1) — 法然とルター
- 東西の恩恵宗教(2) — 親鸞とルター
- カトリックの霊性思想と禅仏教
- 京都学派の禅思想とキリスト教
第8章 霊性の共通性と相違性
- 「神の像」と「仏性」
- 霊性の論理—逆対応と超過の論理
- 東西霊性の交流と相互理解
- 霊性の比較による学び
- 付論1 自然的宗教と人格神
- 付論2 東西の妙好人
あとがき
参考文献
著者紹介 金子晴勇(かねこ・はるお)
1932 年静岡生まれ。1962年京都大学大学院博士課程中退。67年立教大学助教授、75年『ルターの人間学』で京大文学博士、76年同書で日本学士院賞受賞。82年岡山大学教授、1990年静岡大学教授、1995年聖学院大学客員教授。2010 年退官。
主な著書:『ルターの人間学』(1975)『アウグスティヌスの人間学』(1982)、『ヨーロッパ人間学の歴史』(2008)、『エラスムスの人間学』(2011)、『アウグスティヌスの知恵』(2012)、『知恵の探求とは何か』(2013)、『キリスト教人間学』(2020)、『私たちの信仰』(2020)、『人文学の学び方』(2020)、『ヨーロッパ思想史』(2021)ほか多数 主な訳書:アウグスティヌス著作集 第9 巻(1979)、ルター『生と死の講話』(2007)、ルター『神学討論集』(2010)、エラスムス『格言選集』(2015)、C. N. コックレン『キリスト教と古典文化』(2018)、エラスムス『対話集』(2019)、ほか多数