『イエス・キリストに出会う 渡部 信説教集』評・中島秀一
『イエス・キリストに出会う 渡部 信説教集』 渡部 信著(YOBEL,Inc、1,890円税込)
このたび、渡部信先生の説教集「イエス・キリストに出会う」が刊行されました。日本プロテスタント宣教150周年記念大会の働きを共にした者としてご出版を心からお慶び申し上げます。書評を依頼された者として、ここに本書の読後感を述べさせて頂きます。
著者はキリスト教界においてよく知られた日本聖書協会総主事です。著者は立場上1年に何十回となく海外渡航されます。その広がりは世界の隅々にまで及び、そこから得られた多様な人脈、豊かな経験、異種文化への寛容、日本教会への鋭い洞察、そしてそこから到達された「イエス・キリストに出会う」という信仰等々、それは著者の宝であると共に私たちの宝でもあると思います。
本書は第1部説教と第2部付録から成っています。説教は常盤台バプテスト教会の講壇から語られたもので21の説教が、付録はエッセイ2編と小論文2編が収められています。ここでは詳細に評することは出来ませんが、「あとがき」に記されてる説教に対する基本姿勢がすべての説教に貫かれているのはまことに見事の一語に尽きます。「説教は御言葉から語られること、自分の神学を持ち出さないこと、会衆は神を礼拝するために集まっているので、説教が生きた神の言葉として理解されるよう、信仰の決断が与えられるよう、日常の言葉で生活の周辺に起きている事柄を絡ませながら、具体的な出来事や証しを織り交ぜて話すことが大切である」 著者は優れた実務家、説教者、牧会者、学者です。ある方々は説教を通して大きな慰めと力を受け、ある方々は付録を通して学問的なチャレンジを受けるでしょう。しかし、「聖書を通読することは毎日欠かせない。聖書の御言葉はいつも生活の隅々で無意識の中で生きて働いている。そこから信仰の証しとも言える体験が起こっても不思議ではない」という言葉は、最も重みのある言葉でした。一人でも多くの方々の購読をお勧めいたします。
(評・中島秀一=日本イエス・キリスト教団荻窪栄光教会主管牧師、日本福音同盟理事長)