単なる手引き書でなく、子どもの心に沿って構成されたあそびうたの誕生!

20160810

鈴木明子:作詞/作曲 
奥田なつ子:絵 
喜多ゆり:楽譜浄書
うたであそぼう あそびうた50
(B5判・112頁・本体1500円+税)

古屋博規師(ふるや・ひろのり=岩沼教会牧師、岩沼保育園副園長)

 

 今年夏、満を持して『うたであそぼうあそびうた50』が、ヨベルから出版された。長く待ち望まれた、このあそびうたにかけた作者の思いを知るものとして、是非とも関係者(保育園・幼稚園で関わる先生方)には、お手元に置いて活用して頂きたいと思います。

 作詞・作曲をされた鈴木明子さんは、長く保育者養成機関(国立音楽大学附属音楽高校・東京YMCA社会体育・保育専門学校)にて指導に携わりながら、保育園・幼稚園で子どもたちと過ごしています。現場の先生と同じ目線で、お仕事をしながら自らも保育士となりました。春夏秋冬それぞれに、育ち合う子どもたちと目線を合わせながら、身体の動きに合わせ、どこからでも入り込める歌は、ほんの小ちゃな瞬きのようなきっかけから始まります。そして、子どもの目線に合わせてあそびうたに入ります。

1「はじめまして」の歌とともに、子ども同士の動きを紹介しながら、子どもの拍感を感じ合う姿は、わたしもいれて!と声をかけたくなります。

5「てんてんてん」保育園に集うあかちゃんと保育士が向き合い、喜びがはねています。子どもの成長は、心と体が調和して力をいただきます。やがて力にあふれる子どもたちは、手をのばして動物に、そして小動物に思いが向かいます。

28「おふねはぎっちらこ」拍動が大きな海を乗り越えるためのオールとなって漕ぎだします。

34「グーグーなんのおと?」もうお昼、カラダ全部が動きます。

秋の季節、39「おやまのどんぐり」おおきくなった、わたしたち、どんぐりのように、ころがって町までゆきます。大きくなるという、スケールの大きさとともに成長を見ます。広々とした世界に向かって大きくなあれ!

44「おにわのかきのきに」友だち同士がにっこにこ。おいしそうな柿の成長、あーおいしい。ひよどりも やってきました。はいどうぞ! それを見ていたおひさま、子どもたちは、にっこにっこです。ことりのさえずり、小川のせせらぎ、水を得た稚魚が大海に向かうように、育ちゆく子どもと教師のリズムがはっきりと聴こえてきます。みんなが楽しくなって、子どもたちの顔もほころびます。ふんふんなんだか 楽しい気分になりますよ。

50「さよならのうた」で作者は、保育にたずさわる保育士の一日が、子どもたちの明日を待っていますよ。とのあいさつが聞こえます。

 この本と共に、イラスト:奥田なつ子さん、楽譜浄書:喜多ゆりさんの働きが、作る者の声をうみ出し、子どもたちと元気にはずむ歌を、より一層支えています。作者の思いが、イラストを通じてさらに響いてきます。保育者の様子を知る鈴木さんの配慮は、いろいろな伴奏型、左手伴奏型、コード表にも現れています。何という恵み、何という喜びでしょう。

 単なる手引き書ではなく、子どもの心に沿って向き合い、その心の窓が少しずつひろげられながら、人と人とがふれあってゆく。作者の鈴木明子さんの思いは、保育に携わる一人一人を労りながら現場に立つ保育者を支え続けて下さいます。演奏のCDも現在準備中と聞く、待たれる副教材ですね。