芹野与幸 [著]ヴォーリズの足跡に魅せられて かおりの宝庫を訪ねる

芹野与幸 [著]ヴォーリズの足跡に魅せられて かおりの宝庫を訪ねる

四六判・306 頁・1800 円+税 
ISBN978-4-911054-61-1 C0016

「米国より来たりて留まった」一柳米来留(ひとつやなぎめれる)ことウィリアム・メレル・ヴォーリズ。著名な建築家のみならずキリスト教伝道の担い手でもあったその足跡を、妻 一柳満喜子との絆を軸に多角的に照らし出す。近江兄弟社の広報誌『湖畔の声』連載記事を書籍化。

まえがき ― 40 年目の玉手箱
W・M・ヴォーリズと私の出会い
ヴォーリズの足跡を探る北米旅行 ― 少年時代の思い出
ライオン教授との出会い
アメリカ人教師の日本体験記
YMCAのネットワークに支えられて
滋賀県立商業学校基Y M C A 督教青年会の創立
スペシャルなランチ・タイム
軽井沢外国人避暑地一二五年の記念会
軽井沢外国人避暑地一二五年(続)
日本をこよなく愛した外国人
   ― ガントレットとヴォーリズ
アメリカン・ボードとの出会い
ミッションスクールのつながり
蒔かれた種の一粒は……
ヴォーリズ建築展 各地で開催
様々な出会いから
神戸女学院につながる物語
街の顔 大丸百貨店
関西学院 ヴォーリズの「祈りのかたち」展
めぐり合わせの不思議

運命の出会いから 〜 ヴォーリズと満喜子
運命の出会いから(続)
満喜子の父母のことども
父の思い出
ハイドさんとの出会い
ヴォーリズ夫妻と軽井沢
キリスト教の軍隊?
建築家としてのデビュー
歴史文化を伝える営み
成城学園小学校とヴォーリズ夫妻
駒井卓、静江記念館(京都北白川)
愛する二つの母国の間で
不思議な巡り合わせで
東京に建設された徳川侯爵の音楽堂
ある郷土史家のヴォーリズ探訪(教会の見える風景)
時代を超え、次の世代へと(旧神戸ユニオン教会)
「僕はヴォーリズがいい」
ヴォーリズ・マジック
小説家 玉岡かおるさんとの出会い
三人の母
一枚の写真が語りだす物語、ほか

芹野与幸(せりの・ともゆき)
1951年 東京生まれ
1973年 桜美林大学 文学部英語英米文学科卒
     財団法人 基督教視聴覚センター勤務
1981年 宗教法人 霊南坂教会 会堂改築事務局長・教会主事
1988年 株式会社一粒社ヴォーリズ建築事務所 経営管理室長
2010年 同 執行役員
2017年 同 定年退職
~ 2024年 公益財団近江兄弟社 嘱託研究員
現在  株式会社一粒社ヴォーリズ建築事務所 非常勤顧問
NHK 文化センターなど、各種の講演活動に従事。
〈記念講演など〉
2005年 近江兄弟社学園 創立80周年記念講演
2011年  軽井沢 外国人居留地125周年記念講演
2014年 北海道北見市ピアソン記念館 100周年記念講演
2014年 大阪教会 創立140年記念講演
2014年 第103回 日本エスペラント大会 公開講座
2016年 近江八幡市 旧伊庭家住宅 公開3周年記念講演
2017年 明治学院 チャペル献堂100周年記念講演
2018年 大阪YWCA 創立100周年記念講演
2019年 東洋英和女学院 135年記念講座
2022年 京都YWCA 100周年プレ・イベント記念講演会
2023年 大阪教会 会堂の献堂100周年 記念講演会
2024年 第119回 近江兄弟社 創立記念講演
2025年 刈谷教会 創立70周年記念講演

これまでヴォーリズに関しては大阪芸術大学の山形政昭氏による建築に関する複数の書籍、奥村直彦氏による「ヴォーリズ評伝」また、かつて滋賀から東京に至る複数個所で開催されたヴォーリズ展の開催に合わせて制作された図録集、写真集、最近はヴォーリズと共に活躍した吉田悦蔵の孫である吉田与志也氏の著作などがあり、加えて各種のグラビア雑誌や機関誌等に頻繁に掲載される様々な紹介記事を並べると一二〇年前に来日した一青年の物語がいまだに根強い人気があることに驚かされる。もちろん本人が書いたとされる「失敗者の自叙伝」や昭和初期に発行された「吾家の設計」吾家の設備」も復刻され現在でも手に取ることができる。その人気は世代を超えて広がっている。
 そんな中で、昨年新たに書籍となった一冊(『ヴォーリズの足跡に魅せられて かおりの宝庫を訪ねる』)はやや趣を変え、著者である私自身がヴォーリズ建築事務所にかかわって以降、創業者であるヴォーリズの残り香を求める中で出会った人々との交流から学ばされたことどもをエッセイ風に寄稿したものである。建築だけの話題だけでなく、背景にある歴史やヴォーリズと親しく交流した人々のこと、生い立ちなども文献的な情報を超えて実際に訪れた地の話題なども盛り込んだ。同志社とのつながりは、アーモスト館の設計がヴォーリズであったことだけでなく、初代のオーティス・ケーリやデービス宣教師らとの関係や、今日にも歌い継がれているカレッジソングの作詞など同志社とは古くから親しいつながりがあり、アーモスト館の関係ではケーリ家と三世代にわたる交流もあった。
月刊誌『湖畔の声』の連載であるから、気が付けば五十話を超えた。ただ、月刊誌は通読するとこれを保管するより日がたてば廃棄されることが普通であろう。それが幸いにも出版社ヨベルの編集者の目に留まり一冊の書籍の形になった。
先のDACニュースの記事の冒頭で紹介されたように、建築の専門家でなかった私が不思議な導きでヴォーリズ事務所に招かれ、退職後も公益財団法人近江兄弟社で嘱託研究員としてヴォーリズの足跡を追い続けたことには偶然にしては出来すぎた助走があったことも事実だ。同志社との関係においては、新島の亡き後二代目の校長となった小崎弘道は私の母方の曾祖父にあたり、息子である小崎道雄、父である芹野俊郎もヴォーリズとの面識がすでにあったことを後に知った。また母校である桜美林大学で邂逅を得た清水安三は自らをヴォーリズの愛弟子と吹聴していたというめぐり合わせがあった。だから世代こそ全く違うが、ヴォーリズとの接点を自然と意識するようになったのだろう。そんなことで、私にとってヴォーリズは身近に感じる存在となっていた。
ヨベルの編集者からの助言を受け、五二話をどのように配列するかを見渡したところ、大きくは次のような分類ができるのではないかと気付いた。
① ヴォーリズ夫妻の生涯
2 ヴォーリズが関わった仕事
3 ヴォーリズに出会った人々
4 探訪で自分が出会った人々
5 求められて講演などで語った事
また併せてコラムなどで扱った豆知識の記事も加えることにした。もとになる文章は月刊誌の連載であることから、読者に興味を持ってもらうために様々な写真や画像なども公益財団近江兄弟社から提供を受けて加えていたので、それらをそのまま用いて新たに再構成して版を組んでもらった。
かくして、評伝でもなく、専門書でもなく、研究論説でもないエッセイ集が一冊に集約された形になった。
興味深いことに、この連載記事の頃から某大学のある教授が興味をもって下さり、自らの大学でのゼミ授業に参考文献として用いられたことから若い世代の学生たちがヴォーリズについて研究論文として取り組もうという学生も現れた。その教授からはこれから先も文献的にも利用できるように全体の記事に人物名などの索引を添えるようにという助言までいただいた。
私自身はこうした執筆を生業とはしてこなかったので、この種の本が書店で読者の目に留まるのだろうか?という一抹の戸惑いがあった。しかし幸いなことにヨベル社によれば半年の書店で新刊委託の期間では比較的順調に推移し、売れ残り在庫が倉庫に積み上がることもない状況であったようでホッと胸をなでおろしている。
もし興味をお持ちになられたらぜひ一度お手に取っていただき、ヴォーリズという人物を少しでも身近に感じていただけたらこの上ない喜びである。