金子晴勇[著] ヨーロッパ精神の源流 キリスト教思想史の諸時代Ⅰ [第1回配本]
金子晴勇[著]
キリスト教思想史の諸時代Ⅰ
ヨーロッパ精神の源流
(ヨーロッパ思想史)[全7巻]
各巻 新書判・平均256 頁・1,200 円(税別)
ISBN978-4-909871-27-5 C0216
書 評
神話の舞台からロゴスの世界へ。
その豊潤な道行きを追跡する!
わたしはヨーロッパ思想史を研究しているうちに、そこには人間の自己理解の軌跡がつねにあって、豊かな成果が宝の山のように、つまり宝庫として残されていることに気づいた。その結果、思想史と人間学を結びつけて、人間特有の学問としての人間学を探究しはじめた。こうしてこれまでの哲学的人間学よりも広い射程をもつ文化的な人間学を確立すべく努めてきた。この点を詳しく述べてみよう。……わたしたちが歴史を研究するのは、ほかならぬ現代を知るために過去にさかのぼるのであって、現在の問題が歴史においてどのように起こってきたかと、問題史的に考察するためである。わたしたちが過去の文化的遺産を摂取して、今日に生きる意義を見いだし、文化的価値を創造的に発展させて行くに際し、歴史研究は不可欠の仕事となっている。とくに困難と障害が大きいばあいには、それをのり越えるために、一度はその背後にしりぞいて、長い助走をとらなければならない。歴史はこの助走路である。人間が自己自身を反省する「人間の自覚史」も同様に人間学を考察する上で不可欠であって、それは哲学・道徳・宗教・文芸において豊かな宝の山となっている。わたしは哲学のみならず、宗教や文芸の中から宝物を探し出したいと願っている。(本書より)
主な目次
序論 キリスト教思想史は人間学の宝庫である―「キリスト教思想史の諸時代」への序として
1 ヨーロッパ思想の三つの柱
「談話室」 源泉志向ad fontes の意味
2 ギリシアにおける哲学の起源
「談話室」 タレスと婦人たち
3 神話からロゴスの世界へ
「談話室」 プラトンは観念論者か
4 ダイモーン信仰とその批判
「談話室」 ホメロス物語の守護神
5 聖書の神秘思想
「談話室」 キリスト神秘主義
6 神の属性としての聖性
「談話室」 「わたしはありてあるものである」の解釈
7 霊性の物語的表出
「談話室」 オイディプスとイエス
8 聖書における神とサタン
「談話室」 アウグスティヌスとミルトンの『失楽園』
9 キリスト教教父の神秘思想
「談話室」 受肉の神学と神化の思想
10 キリスト教と古典文化
「談話室」 新約聖書だけを学べばよいのか
著者紹介
金子晴勇(かねこ・はるお)
1932 年静岡生まれ。1962 年京都大学大学院博士課程中退。67 年立教大学助教授、75 年『ルターの人間学』で京大文学博士、76 年同書で日本学士院賞受賞。82 年岡山大学教授、1990 年静岡大学教授、1995年聖学院大学客員教授。2010年退官。
主な著書
『ルターの人間学』(1975)『アウグスティヌスの人間学』(1982)、『ヨーロッパ人間学の歴史』(2008)、『エラスムスの人間学』(2011)、『アウグスティヌスの知恵』(2012)、『知恵の探求とは何か』(2013)、『キリスト教人間学』(2020)『私たちの信仰』ほか多数
主な訳書
アウグスティヌス著作集 第9 巻(1979)、ルター『生と死の講話』(2007)、ルター『神学討論集』(2010)、エラスムス『格言選集』(2015)、C.N. コックレン『キリスト教と古典文化』(2018)、エラスムス『対話集』(2019)ほか多数